「宗教書、哲学書、文学書などを乱読するうちに、
何かから解き放たれていく自分を感じた。
人間であることの悲しみが薄らいだわけではない。
本を読むことによって、
むしろその悲しみは動かしがたいものになっていった。
しかし、そのほんとうの悲しみを知ってしまったのは、
私だけだないということに気づいたのである。」
「ひとりのいのちは、多くの人々の中に分配されて存在している。
分配されたいのちは、分配された人のものなのである。
いのちは自分だけのものではないということと、
創造を絶する長さの歴史を持っているということが、
いのちが尊いゆえんであると思う。」
‥‥柳澤桂子著「いのちのことば」より