生かされてある日々

「世界はエネルギッシュな人間のものである」……エマーソン(1803~1882)米の思想家

ヤラウの実 Ⅳ

アスファルトの歩道の端っこに落ちた実が、西日に照らされて黄金色に輝いていた。

f:id:ishiina198:20160730182607j:plain

 鉛筆、色鉛筆 etc  (2013.11.18)

「書くことは治療法のひとつの形である。書いたり作曲したり描いたりしない人々はすべて、どうやって(孤独からくる)狂気やうつ病や人間に固有のいわれのない恐怖からうまく逃れているのかと、わたしはときどき不思議に思う」
             …グレアム・グリーン(1904~1991)イギリスの小説家

静けさに帰る

萬物は
生まれ、育ち、活動するが
すべては元の根に帰ってゆく。

それは静けさにもどることだ。
水の行く先はーーー海
草木の行く先はーーー大地

いずれも静かなところだ。
すべてのものは大いなる流れに従って
定めのところに帰る。
(そして、おお、再び甦るのを待つ。)
              ‥‥老子第16章 から抜粋

‥‥「人生は愁(かな)しみだ」とありましたけれど、それは社会での生存競争から来るのでしょう。そこから抜け出すと、命の喜びや美しさが見えるようになると思うなあ‥‥‥。
 
 ライフエナジーというのは、生きているものを何とか生かそうと励ます。動植物すべてがその生かそうとする力に従って生きてゆく。憂いや死への恐れでは生きてはいない。人間も動物ですからね。本来は喜んでライフエナジーの働くままに生きていけるはずです。
 
 でも所有と競争の社会にいると、時には欲や恐怖にとらわれる。だけど、個人としての僕たちは、いつでも、このアンバランスを回復して、喜びのこころを起こせるんでしょうね。
 
         ‥‥加島祥造帯津良一著「静けさに帰る」風雲舎より

f:id:ishiina198:20160715182128j:plain

路上の死 Ⅱ(風化)

それから一週間後に行ってみると、どこかに蛆虫は去りすっかり乾燥がすすんでいた。
もう一週間もしないうちに風に飛ばされて跡形もなくなってしまうだろう‥。

f:id:ishiina198:20160629202213j:plain

鉛筆、色鉛筆、他(2013・5・14)

 

「残念ながら、
あなたがいまかかえている問題は、
そんなに深刻なものではありません。
ただ、あなたが深刻にしたがっているだけのことです。
(中略)
いずれにしろ、
生物としての生き延びるための問題解決というレベルから見れば、
わたしたちが日常かかえている問題なんて、
どれもたいしたことではありません」
           
           ‥‥伊藤守著「だいじょうぶたいしたことないから」より

 

路上の死 Ⅰ

f:id:ishiina198:20160625083610j:plain

鉛筆、色鉛筆、他による画(2013.1.28)

 

「おそらくほかの動物は知らないと思うのだけれど、人間だけは自分が死ぬということ  をすごく早くから知ってて、自分が死ぬということを、自分の人生観の中に取り入れて生きていかなければいけない。それはある意味では病んでいるのです」
               
             ‥‥‥新潮文庫村上春樹河合隼雄に会いにいく」より

エフトゥシェンコ

ぼくらは
           孤独をはばかって
                                    やりきれなさのあまり
なにかの仲間に身を投ずる
すると  役立たずの友情の奴隷のきずなが
棺桶のふたまで  つきまとってくる。

 

どの仲間も  ばかげた具合にできていて
ある種の仲間じゃ  酒をのむばかり
               正気返るひまもない。
べつの仲間じゃ   衣服や女の話ばかり
またべつの仲間じゃ
         まるで思想論争はだしのおしゃべりばかり
しかし よく見ると
         どの仲間にも共通の性格‥‥‥
つまりは  暇つぶしの種々様々の形態だ!

 

あっちも
    こっちも  さわがしい仲間ばかり‥‥‥
いったい幾つの仲間から  ぼくは逃げのびただろう
                       かぞえきれないくらい!
新しいわなにかかったと思うと ぼくはたちまち
そこに毛皮だけ残して
          とびだしてしまう。
おれはぬけ出たぞ!
         行途には荒涼たる
自由よ きみが待っている‥‥‥
               まったく きみがいなくちゃ やりきれない!
           
                           ‥‥‥‥「白い雪が降る」エフトゥシェンコ詩集より

蟹 ・ 風化

f:id:ishiina198:20160614034814j:plain

鉛筆、色鉛筆画(2012・9)

「宗教書、哲学書、文学書などを乱読するうちに(中略) 
  人間であることの悲しみが薄らいだわけではない。
  本を読むことによって、
  むしろその悲しみは動かしがたいものになっていった。
  しかし、ほんとうの悲しみを知ってしまったのは、
  私だけではないということに気づいたのである」

                   ……柳澤桂子著「いのちのことば」より